2011年10月29日土曜日

序文

 
 見上げればそこには無限の広がりを持つ大空がある。そしてこの不思議な青い空間は世界中と繋がっていて、その向こうではこちらと同じ時が流れている。世界中のどこにいてもそれは変わらない。地球の始まり、それ以前からずっと存在する一定の流れの中に、今という時間は二度とこない。過去も現在も、一つも同じことが繰り返すことはない。人や自然や生物といったもの、それから世界の全てのありとあらゆる物は今という時間にのみ存在する。そして全ての物には理(ことわり)があり、その一つ一つの内には、また微小な無限の理を持ち、それらは内と外と複雑に絡み合っている。小さな砂粒の一つから宇宙に至るまで、理によって存在する。
 人間には人間の理がある。人間という複雑な構造への問いを内に抱えながら、絶えず自然や生物と関わり、一種の生命として地球に存在する。では人間は何のために存在するのか。鳥や獣の目には、さぞ無意味な生物に見えるであろうこの人間の、小さな疑問の一端を、生というごく限られた一瞬に、まばたきをするかの如く考えてみたい。

 私の見たまま、聞いたままの有様が、日本人という一風変わった独立種族の、若い方々の見聞を広げるきっかけになれば、酒の肴に結構である。